“iSamepi”

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【歌詞考察】Show yourself (Frozen2)についての雑考 - 予備知識編「All is found」とは

おはようございます。
最近ディズニープラスに加入して、映画を観まくってるわけですが、
このたび「アナと雪の女王2」をめちゃ久しぶりに観ました。

 

相変わらず歌が素晴らしい。私は個人的に最初のアナ雪より、アナ雪2のほうが好きです。
in to the unknownももちろんいいのですが、私が一番推したいのはShow yourselfです。

 

今回は、Show yourselfについて考察します。

私は実はドイツに留学していてドイツ語がちょっとだけできるのと、フランス語を勉強しているので、日本語、英語、ドイツ語、フランス語の歌詞から考察していきます。

 

なぜ複数の言語で考察するかというと、英語と日本語だけで見るから「誤訳じゃないか?」という疑問が湧くんです。

 

結論から言うと、私は"I am found"を「見つけた」と和訳したのは誤訳ではないと思っています。

 

英語のものを各国語に翻訳するにあたって、ディズニーが伝えたいことはなんだったのかを考えると、別の見方ができるようになります。

(ディズニーがちゃんとそこまで考えて翻訳してると信じて…)

 

 

1. 前置き

例えば、映画のタイトル。
※ここ以降、[en]英語、[ja]日本語、[de]ドイツ語、[fr]フランス語を表します。
[en] Frozen
[ja] アナと雪の女王
[de] Die Eiskönigin = The Ice queen(氷の女王)
[fr] La Reine des Neiges = The snow queen雪の女王

 

ここからわかるのは、「これはエルサの物語である」ということ。
日本は「雪の女王」だけでも良かった気がするけど、日本人は姉妹モノ好きだったりするし、タイトル長い方が興味を惹かれる傾向にある(ラノベのタイトルの長文化はやりすぎだが)から、まぁ「アナと」をつけたのは正解だったんじゃないかな。
「Frozen」は映画を観てから「あ、これはエルサのことなんだ」ってわかるタイトルでオシャレだけど、ディズニー的にはオシャレさよりもわかりやすさを優先したってことですよね。
まぁ、もともとアンデルセンの「雪の女王」が根底にあるから、そっちに寄せるのもわかるし、雪の女王とエルサは全然違うから関係ないタイトルにしたかったのもわかります。

 

という感じで、もう一つ例を出しましょう。
アナ雪2で、よくプロモーションされている曲。

 

[en] "into the unknown"
[ja] "イントゥ・ジ・アンノウン〜心のままに〜"
   控えめに言ってクソタイトル。歌詞のとおり「未知の旅へ」でいいじゃん。
[de] "wo noch niemand war"=where nobody were yet =誰も行ったことがないところ
[fr] "vers l'inconnu" = into the unknown
  タイトルは同じですが、歌詞の方は
  "Dans un autre monde = in another world = もう一つの世界で"
  です。

 

たぶんこの曲のエッセンスは

・エルサは、今自分がいるのとは違う世界(アレンデール周辺以外)から呼ばれている気がしている

・自分にとっては未知の世界に飛び込んでいくことになる

・誰も行ったことがない場所に行くんだ

ということなんだな、というのがタイトルとサビ歌詞だけでわかりますね。

たしかにアートハランは「実在するの…?」って感じの伝説上の場所と考えられていたので、意味は通ってますが、ドイツ語のタイトルはネタバレなんじゃね?

 

この曲は考察するほど深みを感じなかったので置いておいて、本題にいきましょう。

 

2. 予備知識 - All is found の歌詞考察 -

さて、Show yourselfを考えるにあたって、前もって知っておかなければいけないのは、映画序盤でお母さんが歌ってくれた子守唄です。

タイトルは

[en] "All is found"

[ja] "魔法の川の子守唄"

[de] "Es kommt zu dir" = It comes to you

[fr] "la berceuse d'Ahtohallan" = Ahtohallan's lullaby=アートハランの子守唄

 ですね。

タイトルから、

「アートハランという魔法の川のことを歌った子守唄である。」

ということはわかります。

ただ、"All is found(英語)", "It comes to you(ドイツ語)"の意味がちょっとよくわかりませんね。

では歌詞を見ていきましょう。日本語訳は自分でつけているので、意訳を多く含みます。

 

(1)英語

Where the north wind meets the sea / 海と北風が出逢う場所

There's a river full of memory / 記憶でいっぱいの知る川がある

Sleep, my darling, safe and sound / 安心してぐっすり眠りなさい、可愛い子よ

For in this river, all is found / この川では、すべてが見つかるのよ

 さっそくですが、「すべてが見つかる」=「安心できること」という感覚が難しいですよね。

キリスト教的な観点ですが、この受動態の欠けている部分は

 "I am found by God"

であったり、

 "I am found by mother"

であったり、

 "I am found by someone"

です。

findは「理解する」という意味を含みます。

つまり、"I am found"とは「相手が自分を理解し受け入れてくれる、自分の存在証明をしてくれる」という意味です。

エルサにとって、自分がなぜ魔法の力を持ったのか、そして両親はなぜそれを隠そうとしたのかを知ることが命題でした。

「両親はありのままの私(=”力”を持つ私)を受け入れてくれてなかったのか?」

という疑問と葛藤が、アナ雪2の根底です。

  

長くなりましたが、この第1フレーズは、

「すべてを知る川は、あなたのすべてを理解し、包み込んでくれる温かい存在である。だから安心しなさい」

ということを謳っていることになります。

 

ここでなぜ「お母さん」の話をするかというと、それは3番の歌詞を見ればわかります。

 

In her waters / 川の中は

Deep and true / 深くて清らか

Lie the answers and a path for you / あなたのための"答え"への道がある

Dive down deep into her sound but not too far or you'll be drowned / 川の音に飛び込んでみて。ただし溺れないように。

 「川の音」ってなんだ・・・?その答えは、フランス語が教えてくれます。お楽しみに。

Yes, she will sing to those who hear / そう、川は"聞く者"のために歌う

and in her song, all magic flows / 川の歌は魔法に満ちている

But can you brave what you most fear? / あなたは一番怖いものを恐れない?

Can you face what the river knows? / 川が見せる真実に立ち向かえる?

Where the northwind meets the sea / 北風が海と出逢う場所

There's a mother full of memory / すべてを知る母がいる

Come, my darling, homeward bound when all is lost then all is found / 帰っておいで。すべてを失っても、私はあなたの味方。

 trueは「まっすぐ」というニュアンスを含みます。pureに近い意味。

 Lieは、もちろん「嘘をつく」ではなく「横たわる」。直訳では「答えと、そこに至る道が横たわっている」ですね。

She/Herは「川」です。3番で、「川」とは「母」なのだと明言してますしね。

 

>Come, my darling, homeward bound when all is lost then all is found

ここの訳は諸説ありだと思いますし、そのすべてが正解だと思います。

「すべてを失っても、失ったものを取り戻せる(再発見できる)」と捉えるか、

「すべてを失っても、そんなの関係なく包み込んでくれる」と捉えるか。

個人的に、ここは、上京する娘に

「辛かったらいつでも帰っておいで」

と言っているんだと思いたいです。と、ここまで考えて、ドイツ語を見てみましょう。

そしたら違う考えになるかも。

 

(2)ドイツ語

Folg' dem Nordwind, denn er bringt dich zum Meer hin, wo ein Fluss entspringt.

[en] Follow the north wind, because it brings you to the sea where a river rises.

[ja] 北風についていくのよ。川と海が出逢う場所に連れて行ってくれるわ。

ちょっと待て!!!北風と海が出逢うんじゃなかったのか!?

北風と海の境目の話だと思ってたけど、川と海の境目の話になってる・・???

Schlaf, mein Liebling, Ich bin hier. Der Fluss gibt Antwort, dir und mir.

[en] Sleep, my darling, I am here. The river answers you and me.

[ja] 眠りなさい可愛い子。私はここにいるわ。川は私たちに答えてくれる。

 

Seine Wasser, tief und klar, offenbarn dir alles was geshcah.

[en] Its water is deep and pure, and it reveal everything what happened to you.

[ja] 川の水は深くて清らか。あなたに起こったことをすべて明らかにしてくれる。

川はすべてを知っていて、答えを教えてくれる。

「川は記憶を持っている」という設定と、微妙に違う気が。

「すべてを知っている」と「記憶を持っている」って違いません??

Tauch hinein, doch nur ein Stück, sonst sinkst du tief, kehrst nie zurück.

[en] Dive in, but only a little, otherwise you will sink deep, never return.

[ja] 少しだけ飛び込んでみて。でないとあなたは沈んで、帰れなくなる。

気をつけつつ飛び込んでというところも一緒。 

Sein Lied birgt herrliche Magie unt eine Macht, unendlich groß.

[en] Its song holds wonderful magic and power, infinitely great.

[ja] 川はすごい魔法と力を秘めている。

「川は魔法に満ちている」と一緒。

Bist du genauso stark wie sie? Was er zeigst, lässt dich nie mehr los.

[en] Do you as strong as the river? What it shows, never let you go. 

[ja] あなたは川と同じくらい強くなれる?川が見せるものは、あなたを決して離さない。

「川が見せるものを受け止められるくらい強くなって」ということですね。

Folg' dem Nordwind, denn er bringt dich zum Mutter, die sein Lied noch singt.

[en] Follow the north wind, because it brings you to the mother who is still singing her song.

[ja] 北風についていくの。北風は母のもとへ連れて行ってくれるわ。

  今も歌を歌っている母のもとへ。

はい、ネタバレ!!!

呼び声(=歌)の主はお母さんでした!

Show yourselfのシーンで、壁面に映し出された水の記憶を覚えていますか?

英語版だったら、そのシーンで「あ!!エルサを呼んでたのはお母さんだったんだ!」ってなるわけですが。

ドイツ語版ではこの時点で「あぁ、呼んでるのはお母さんなんか」とわかってしまいます。えー。

 Komm, mein Liebling, glaube mir: Was du verlierst kommt eins zu dir.

[en] Come on, my darling. Believe me: what you lost will come to you.

[ja]  ここに来て、可愛い子。信じて。あなたが失ったものを取り戻せるわ。

 はい、「辛かったらいつでも帰っておいで」説消滅。

エルサが失ったもの(自信とか、自分の存在理由とか)を見つけられるという意味っぽいですね。

タイトルの「Es kommt zu dir」の「es」は、英語では「it」にあたる言葉です。「エルサが失った(と思っている)もの」を指していたんですね。 

 

(3)フランス語

Quand le vent frais vient danser,

[en] When the cold wind comes to dance,

[ja] 冷たい風が、舞い踊るとき

ちょっと待て!!アートハランが北にあるから北風なのでは!?北要素どこいった!

しかも海とか川とかと出逢う話は??踊ってるの???

でも、ゲイルのことを思うと、踊ってるでもあっているかもしれない。

この「北風」はゲイルのことだったのか!!

La rivière chante pour ne pas oublier.

[en] The river sings for not to forget.

[ja] 川は忘れぬために歌い続ける

フランス語につられてちょっと詩的な訳にしちゃった。

でも「川が記憶をつなぐために歌っている」という感じがしますね。

エルサに記憶を見せてあげたくて歌ってる感。

Ferme les yeux si tu veux voir. Ton reflet dans son grand miroir.

[en] Close your eyes, if you want to see. Your reflection in its big mirror.

[ja] 目を閉じて。そしたら見えるわ。大きな鏡に写った、あなた自身が。

いや、アートハランでエルサめっちゃ目開けて、プロジェクションマッピング見てたけど・・?

他の言語で「眠って」ってなっているのは、単純に眠るわけではなく、「目を閉じて自分を見つめ直す」ということに意味があったということがわかりますね。

フランス語版の表現めっちゃ好きだわ。

Dans l'air du soir, tendre et doux, L'eau claire murmure un chemin pour nous.

[en] In the evening air, tender and soft, Clear water whispers a path for us. 

[ja] 夕方の風は、ふわっと柔らかく、澄んだ水は私たちに道を教えてくれる。

英語・ドイツ語は川のことだけを言っていましたが、フランス語はゲイルが好きみたい。

Si tu plonges dans le passé, prends garde de ne pas t'y noyer…

[en] If you dive into the past, be careful not to drown in it,

[ja] 過去に飛び込むなら、溺れないように気をつけて

フランス語以外は「川に飛び込む」という表現ですが、ここでは明確に「過去に飛び込む」と言ってますね。

Elle chante pour qui sait écouter, cette chanson, magie des flots.

[en] She sings for who can hear, this song, magic of the waves.

[ja] 川は聞く者のために歌う。波の魔法の歌を。

川がエルサのために歌ってるよ

Il faut nos peurs apprivoiser pour trouver le secret de l'eau…
[en] We have to tame our fears to find the secret of water

[ja] 水の秘密を解き明かすには、恐怖を手懐けないといけない

恐怖に負けてはだめよ

Quand le vent frais vient danser, Une maman rêve tout éveillée

[en] When the cold wind comes to dance, a mother dreams wide-awake

[ja] 冷たい風が舞い踊るとき、母は目覚めの夢をみる


"Dors mon enfant, n'aie plus peur : Le passé reste au fond des cœurs."

[en] Sleep my child, don't be afraid any more; The past remains at the bottom of hearts.

[ja] 眠りなさい我が子よ。安心していいのよ。過去は心の中にあるのだから。

過去は心の中にある。

ドイツ語や英語のように「川が過去を教えてくれる」というよりは

「過去(エルサが知りたい答え)は心の中にある。自分自身を見つめればわかる」

というように見えますね。

 

(4)日本語

最後に、日本語。

よい子よ、おやすみ

はるかなる北の川に すべての記憶が ひそんでいる 今も

あなたが求める 答えは そこに眠る

探してみなさい おぼれないようにね

聞いて 耳すまして 魔法の川の歌

その秘密を知る 勇気あるのなら

北風が海に 巡り合う その川に

おいでよい子よ 母なる川へと 

 うむむ・・・なかなか情報量が削減されている。。

1番フレーズでthe riverと言っていた部分が、3番フレーズでthe motherに変わっているのがエモいのに、日本語だと難しいね。

「北風が海に 巡り合う その母に」だと「は??」ってなるもんね。

「母なる川」にしたのは賢い。

ここで大事なのは、日本語の翻訳では

「 エルサが求める答えは、母なる川アートハランに眠っている。エルサは勇気を出して、それを見つける」

というストーリーであると示されていること。 

3.考察まとめ

 というわけで、各国の翻訳の主旨をまとめると、エルサの目的はそれぞれ下記。

[en]  "力"を持った私のルーツを見つけ、ありのままの自分を受け入れてもらいたい。
  受け入れられていたという証拠を見つけたい。

[de] お母さんの「ここに来て、可愛い子。信じて。あなたが失ったものを取り戻せるわ。」に応えたい。
  お母さんのもとへたどり着き、失ったもの(自分のルーツ、自信、変化に対する勇気など)を再発見したい。

[fr] 自分自身を見つめ直して、心の底に眠る答えを見つけたい。ゲイルが助けてくれる。

[ja] アートハランの記憶を見つけて、声の正体と自分のルーツを知りたい。

ということになります。

 

以上からわかるように、同じストーリーのようでいて、

言語によってエルサの基本姿勢が微妙に異なることがわかります。

 

したがって、この歌の解決編であるShow yourselfの「I am found」の意味が変わってくるのは当然なんです。

「受動態だから誤訳だ!」とかそういう話ではないのです。

英語版とは少し違う話であるという気持ちで観る必要があります。

 

それでは、次回はShow yourself自体の歌詞を見ていきます。

 

お付き合いいただき、ありがとうございました。

 

P.S.

ちょっと意外だったのは「川は記憶を持っている」という結構重要な設定を表している「There's the river full of memory」の歌詞が、他国の歌詞に反映されてないところ。

「川はすべてを知っている」という言葉にまとめられちゃってます。

「すべてを知っている」のと「記憶を持っている」って違うじゃないですか。

オラフが蘇るエモさにつながる歌詞なので、大事にしてもらいたかった。